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大建中湯で痩せることは可能なのか?

漢方薬をダイエット目的で服用する場合、有名なのは「防風通聖散」「防已黄耆湯」「大柴胡湯」があります。

これらの漢方薬は肥満に適応があり、その効能も認められています。

しかし、大建中湯には肥満の適応はありません。

大建中湯で痩せれる可能性としては以下のようなものがあります。

  • エネルギー消費向上
  • 腸内フローラ是正による効果
  • 便通が良くなる

結論をいえば、大建中湯で痩せれる可能性の否定はしませんが、限定的であり、現実的ではないです。

目次

大建中湯の生薬はどのように働くのか

大建中湯は4つの生薬「乾姜」「人参」「山椒」「膠飴」から構成された漢方薬です。

これら4つの生薬が組み合わさることでお腹を元気にします。

痩せるという観点で個々の生薬を見た場合、「エネルギー代謝」「腸内フローラ改善」に関与しています。

  • エネルギー代謝に関与
    • 「乾姜」「山椒」
  • 腸内フローラ改善に関与
    • 「人参」「膠飴」

乾姜

生の状態から乾燥させたものを「生姜」、蒸してから乾燥させたものを「乾姜」と呼びます。

蒸して乾燥させると生姜の主成分「ジンゲロール」が「ショウガオール」になります。

ジンゲロールに比べ、ショウガオールは体を温める効果が高いです。[1]

体を温める作用で、基礎代謝が上がり、より多くのエネルギー消費が可能になります。

山椒

主成分は「サンショオール」「ヒドロキシ-α-サンショオール」で、独特なにおいと、辛みをもつ成分です。

サンショオールはカプサイシンと同じ場所(TRPV1)へ作用することが知られています。[2]

TRPV1は体温調節や痛みを感じるメカニズムに関与しています。

この作用は体温上昇につながり、エネルギー消費を増大させ、体脂肪を減少させる作用があります。[3]

人参

主成分は「ジンセノサイド」で効能は多岐にわたります。

その中のひとつに、腸内フローラへの影響があります。

ジンセノサイドの多岐にわたる作用は、ジンセノサイドによる腸内フローラへの影響と、腸内フローラがジンセノサイドに与える影響が示唆されています。[4]

膠飴

イモやイネなどが元になっている糖化物です。簡単に言うと飴(あめ)です。

糖分、タンパク質、脂質などを豊富に含んでいるので、体への栄養になります。

糖分などは善玉菌の餌となるため、腸内フローラの改善につながると考えられます。

大建中湯によるエネルギー消費増加

エネルギー消費とは、日常動作に必要なエネルギーのことを言います。

食事から摂取した栄養を体内で燃やすことで、エネルギーが生み出され、生きていくためのエネルギー源となります。

エネルギー消費が増えると、より多くのカロリーを燃やすことができるので、ダイエットにおいて鍵となります。

乾姜によるエネルギー消費増加

ある研究で、生姜の摂取でエネルギー消費量が増加することが確認されています。[5]

この研究では、冷え性の傾向がある若い女性が生姜を摂取した後のエネルギー消費量を測定しています。

1. 服用するもの

偽薬(でんぷん)、生の生姜10g相当、生の生姜20g相当

それぞれ別の日にカプセルで摂取

2. 測定の仕方

食事の後にそれぞれのカプセル服用

1時間、2時間、3時間経過した時点でエネルギー消費量の測定

3. 結果
  • 生の生姜10g相当を摂取
    • エネルギー消費量:1時間後に7.4%、2時間後に8.2%、3時間後に6.6%増加
  • 生の生姜20g相当を摂取
    • エネルギー消費量:1時間後に10.5%、2時間後に11.6%、3時間後に8.6%、より大きく有意に増加

この結果は、生姜を摂取することでエネルギー消費量が増え、体がより多くのカロリーを燃やすことを示しています。

大建中湯に含まれている生薬は「生姜」ではなく「乾姜」であり、厳密には違います。

しかし、乾姜のほうが体を温める作用が強いことから、生姜と同等以上の効果を示すことが考えられます。

山椒によるエネルギー消費増加

ある研究で、高脂肪食を与えられたラットに山椒成分を加えると、体重増加が有意に減少すると確認されました。[6]

研究内容は以下の通りです。

1. 対象のラット

ラットを6グループにランダム分け

  1. 正常食飼料を食べるラット(ND)
  2. 高脂肪食飼料を食べるラット(HFD)
  3. HFDとフェノフィブラートを摂取するラット
  4. HFDと山椒成分(9 mg/kg)を摂取するラット
  5. HFDと山椒成分(18 mg/kg)を摂取するラット
  6. HFDと山椒成分(36 mg/kg)を摂取するラット
2. 測定の方法

ラットの体重と食事摂取量を4週間記録

山椒成分服用ラットの腹部脂肪組織を観察

3. 結果

高脂肪食を与えられたラット(HFD)は体重増加と食事効率が有意に高まる

山椒成分服用のラットは体重増加と食事効率が有意に低下

山椒成分服用のラットは腹部脂肪組織と肝細胞の脂肪の蓄積が少なかった

この結果は、山椒成分を服用することが、肥満防止と脂質代謝改善を示しています。

山椒がエネルギー消費を増加させ、ダイエットにつながる可能性があると言えます。

大建中湯が腸内フローラに与える影響

腸内フローラとは、腸内に生息する何千種類もの細菌の集合体のことです。

腸内の細菌群は主に「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分けられ、特徴は以下の通りです。

腸内細菌特徴

善玉菌
発酵活動
エサ:繊維質、糖分
生成物:乳酸・短鎖脂肪酸など

悪玉菌
腐敗活動
エサ:タンパク質、脂質
生成物:アンモニア、硫化水素など

日和見菌
善玉菌・悪玉菌、優勢な方に同調
発酵活動 or 腐敗活動

中でも重要なのは、善玉菌が生成する短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)です。

短鎖脂肪酸は、エネルギー代謝の向上、食欲抑制に関与しているからです。

大建中湯には、短鎖脂肪酸を生成する善玉菌を増やす作用があるので、ダイエットに役立つ可能性があります。

大建中湯の善玉菌を増やす作用

ある研究で、大建中湯は特定の腸内フローラ、Lactobacillus属(乳酸菌群)を増加させることがわかりました。[7]

また、短鎖脂肪酸のひとつであるプロピオン酸が増加していることもわかりました。

腸内でプロピオン酸が増大すると、悪玉菌が住みにくい環境になります。

善玉菌が優勢になるため、日和見菌も善玉菌に同調しやすい状況になります。

短鎖脂肪酸とダイエットの関係性

短鎖脂肪酸は、腸内の善玉菌が食物中の繊維を発酵させて生成されます。

短鎖脂肪酸は多くの生理現象に関与しており、ダイエットに関していえば、エネルギー消費増大、食欲抑制などに関係しています。

短鎖脂肪酸の作用

  • エネルギー消費の増加
  • 食欲の抑制

短鎖脂肪酸の作用 | エネルギー消費の増加

ある研究で、短鎖脂肪酸が、交感神経を直接調節することが明らかになりました。[8]

交感神経が活性化されると、体温の上昇などを伴い、エネルギー消費の増加につながります。

結果として、ダイエットにつながる可能性があります。

短鎖脂肪酸の作用 | 食欲の抑制

数々の研究で、短鎖脂肪酸が食欲抑制ホルモンの放出に関与していることがわかりました。[9][10][11]

放出される食欲抑制ホルモンは、以下のようなものがあります。

  • GLP-1
  • ペプチドYY
  • レプチン

これらはいわゆる「満腹ホルモン」で、脳に食事後の満腹感を伝える役割を果たしています。

食欲が抑制され、過度な食事摂取を防ぐことが可能になり、結果的としてダイエットにつながる可能性があります。

実際にGLP-1製剤がダイエットに用いられており、平均約2.9kgの体重減少が観測されています。[12]

大建中湯により便通が良くなる

大建中湯の本来の効果です。腸管の運動を促進することにより、おならや便通が改善します。

便が停滞するのを防ぎ、体重が少しだけ減少することが見込められます。

大建中湯の腸管への作用などを詳しく知りたい人は以下のページを参照してください。

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まとめ | 実際に大建中湯で痩せることはできるのか?

大建中湯は「乾姜」「山椒」「人参」「膠飴」から構成された漢方薬です。

大建中湯を個々の生薬で紐解いた場合、以下のような効果があり、体重減少へと繋がる可能性が見えてきます。

  • エネルギー消費増加
  • 腸内フローラ改善による短鎖脂肪酸産生増加
  • 短鎖脂肪酸による、食欲抑制
  • 便通の改善

しかし、「大建中湯によって痩せることが出来るのか」の疑問については、現実的ではないと推測します。

生姜湯飲んでいれば痩せられるのか?

生姜と山椒はエネルギー消費量を増加するので、大建中湯はダイエットに効果がありそうに見えます。

では、生姜湯を毎日飲んでたら痩せるのでしょうか?

はっきり言って不可能なのではないかと思われ、これは感覚的に理解できると思います。

山椒に関しても、唐辛子も一緒に入っている七味唐辛子を毎日食べていたら痩せられるのかといったら、不可能に近いと感覚的に理解できると思います。

ヨーグルト食べていれば痩せられるのか?

善玉菌は短鎖脂肪酸を作り出し、短鎖脂肪酸がエネルギー消費増大・食欲抑制に働きます。

大建中湯は善玉菌を増やす作用があるので、ダイエットに効果がありそうに見えます。

では、善玉菌そのもののヨーグルトを毎日食べていたら痩せられるのでしょうか?

大建中湯に比べて、ヨーグルトは余計なエネルギー源が豊富なため単純には比較できませんが、不可能に近いと感覚的に理解できると思います。

大建中湯は痩せることに関しては無効なのか?

否定的なことばかり書きましたが、ダイエットに関して全くの無能ではないと考えられます。

即効的な体重減少を期待するのは非現実的です。

しかし、長期的な目線で見ると太りにくい体質への変化という可能性が見えます。

  • 「乾姜」「山椒」によってエネルギーが燃えやすい体作りになる
  • 腸内フローラが徐々に改善され、腸内環境から太りにくい体作りになる

なので、大建中湯とダイエットに関しては以下の通りにまとめます。

大建中湯で痩せれるかというと、限定的であり、現実的ではない。

しかし、長期に服用すると、太りにくい体質へと徐々に変換される可能性がある。

参考文献

[1] Ali H B, et al. Some phytochemical, pharmacological and toxicological properties of ginger (Zingiber officinale Roscoe): a review of recent research. Food Chem Toxicol. 2008;46(2):409-20.

[2] Watanabe T, et al. Food Compounds Activating Thermosensitive TRP Channels in Asian Herbal and Medicinal Foods. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2015;61:S86-8.

[3] Kawada T, et al. Effects of capsaicin on lipid metabolism in rats fed a high fat diet. J Nutr. 1986;116(7):1272-8.

[4] Chen Z, et al. Gut Microbiota: Therapeutic Targets of Ginseng Against Multiple Disorders and Ginsenoside Transformation. Front Cell Infect Microbiol. 2022;12:853981.

[5] 夏野豊樹, 平柳要. 生姜抽出物の経口摂取が冷え性の人のエネルギー消費等に及ぼす効果. 人間工学. 2009;45:236-241.

[6] Wang L, et al. Antiobesity, Regulation of Lipid Metabolism, and Attenuation of Liver Oxidative Stress Effects of Hydroxy- α-sanshool Isolated from Zanthoxylum bungeanum on High-Fat Diet-Induced Hyperlipidemic Rats. Oxid Med Cell Longev. 2019;2019:5852494

[7] Shi Z, et al. Anti-inflammatory effect of ginsenoside Rb1 contributes to the recovery of gastrointestinal motility in the rat model of postoperative ileus. Biol Pharm Bull. 2014;37(11):1788-94.

[8] Kimura I, et al. Short-chain fatty acids and ketones directly regulate sympathetic nervous system via G protein-coupled receptor 41 (GPR41). Proc Natl Acad Sci USA. 2011;108(19):8030-8035

[9] Tolhurst G, et al. Short-chain fatty acids stimulate glucagon-like peptide-1 secretion via the G-protein-coupled receptor FFAR2. Diabetes. 2012;61(2):364-71.

[10] Cherbut C, et al. Short-chain fatty acids modify colonic motility through nerves and polypeptide YY release in the rat. Am J Physiol. 1998;275(6):G1415-22.

[11] Xiong Y, et al. Short-chain fatty acids stimulate leptin production in adipocytes through the G protein-coupled receptor GPR41. Proc Natl Acad Sci USA. 2004;101(4):1045-50.

[12] Vilsbøll T, et al. Effects of glucagon-like peptide-1 receptor agonists on weight loss: systematic review and meta-analyses of randomised controlled trials. BMJ. 2012;344:d7771.

 

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